尼崎文学だらけ
出店者名 浮草堂
タイトル ヘヴンズ・ドアー(中)
著者 浮草堂美奈
価格 800円
ジャンル ファンタジー
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紹介文
天上の戦場「ヴァルハラ」
戦士たちの暴力性とエゴイズム、そして狂愛は更に加速!
美貌の双子の兄は弟にいたぶられ。
少女は兄に恋い焦がれて破壊の限りを尽くし
狂人の兄に弟は贖罪を続ける
不死身の大尉を侍は追い
大尉は愛し子たる部下を遠ざける
そしてそれらは、弾丸に刻み付けられる!

 同時刻日本、ソビエト国境付近。

 灯りのない夜戦は不可能だ。
 しかし、この二人なら可能だ。
 矛盾を証明するのは、辺りに転がる四つの死体である。
 生きているのは、日本武士団所属飯塚幾之助。ソビエト連邦KGB所属ウラジーミル・グリゴーリビッチ・グリーシャ。
 死んでいるのは、日本武士団から二人、ソビエトKGBから二人。
 生者の距離はニメートル程度から〇ミリ。
 影も見えぬ二人が交差し、また離れる。
 それは飯塚幾之助の方が確実に速く、事実、彼が握る白刃は確実にウラジーミルに傷を作っている。
 その傷は瞬く間に再生し、再生を待たず拳を幾之助に向って繰り出している。
 外れた拳が、幾之助の背後の小さな崖を砕いた。化石が出そうな程硬質な壁は、人の頭ほどの大きさに凹んだ。
 当たれば肉体がこのようになる拳を避けつつ斬りかかる。
 声は無い。
 相手の息遣いと、殺気、物音。
 それのみで二人は戦っていた。
 常人ではない戦い。
 それが突如破られた。
「Да(ダー)」
 僅かな機械音と、何かに答えるウラジーミルの声。
 次の瞬間、戦いは止んだ。
 ウラジーミルが逃走したのだ。
 当然、幾之助は追走にかかった。
 しかし、足止めを食らわされた。
 手榴弾を投げつけられたのだ。
 爆発を足止めに使う。否、足止めにしか使えない。
 実力の怪物は笑みを漏らした。
「ふ……ふふふ……ふふふふふふふ」
 溢れ切れぬ高揚が溢れ出る。
「あの人、また、強くなっている……」
 飯塚幾之助は強い男を殺したい。
 己の刃によって、斬り裂きたい。
 そして、自分も殺されたい。
 死に一番近いところで、限界になりたい。
 飯塚幾之助は剣士ではない。
 剣豪という名の雄である。