出店者名 今田ずんばあらず
タイトル 射場所を求めて〜今田ずんばあらず短篇集〜
著者 今田ずんばあらず 西村
価格 500円
ジャンル 掌編
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紹介文
人生のなかで、4年間という歳月は長いだろうか、短いだろうか。
私のなかではずいぶんとあっという間のひとときであったように思える。
けれども、大学という空間にいつづけた4年間は、自身に大きな影響があった。
書きたいものが変貌してしまえるほどに。

大学生のうちに24本の短篇を書いた。
ここには、その前半期15本のうち「今田ずんばあらず」を象徴する4本が収められている。
 色褪せぬ憧れがある。
 ボーイミーツガールがある。
 サスペンス・ロードムービーがある。
 世界樹の大巫女がいる。
本誌刊行から4年。
私は再び問いかける。
人生のなかで、4年間という歳月は長いだろうか、短いだろうか。

A5 132P

「美苗さん、お願いします」
 学の懇願は続いていた。
「射形とか矢飛びとか、そういうのを見たいんじゃないんすよ。美苗さんが、射場で、的だけを見つめている姿を見たいんです。そしたらきっと、何かわかるんだと思います」
 学は悩んでいた。判然としない問いに対して、なんとか答えを見つけようと足掻いているような気がした。
 まったく、とため息をつく。
 今までずっと、ゾンビのような生活を送っていた。そりゃ当たり前だ。働いたら弓道をする時間なんて無くなっちゃうし、当然仕事に関東大会なんてない。絡み合う人間関係が私の首を絞める。
 なんで生きてるんだろう? その答えなんて、ゆとり世代の私には出てこない。浮かびあがるのは、否定か拒絶だ。それでも私は働きつづけるしかないのだ。その程度のことしか考えられない。
 だからこそ、私を乗り越えてほしい。
「しょうがないなあ」
 ちょっと呆れた風を装って笑みをもらし、髪をうしろで結ぶ。
「道具一式、貸してくれない? 胸当ても朝練用のがあるでしょ?」
 もう一度、的の前に立ってみよう。


 弓手で弓を執り、妻手で矢を持ち、呼吸を整える。射位に移り、足踏みをした。胴造りをして、矢をつがえる。息を吸い、ゆっくりと吐いた。もの見をする。白と黒の円い的を見るのもいつぶりだろうか。気持ちが昂ってくるけど、それを優しくなだめ、心のなかにしずめていった。
 打起しをする。線香の煙が立つように、ゆっくりと、それでいてふつふつとこみ上げる情熱をたたえながら、和弓を天高くつきあげる。大三、そして、引分ける。呼吸で拍をとりつつ、左右の均衡を乱さぬまま、なめらかに弓をおろしていく。肋骨を拡げ、両の肩甲骨を合わせる。
 会の状態に入った。じっと離れが来るのを待つ。妻手の肘は落ちていない。外すときはいつも肘が落ちるんだ。恩師の言葉が蘇り、そして消えた。狙いの位置なんて忘れてしまったけど、体は覚えている。だからそれに託す。自ずと弦と弓掛は離れた。矢は一直線に飛んだ。


「射場所を求めて」より