出店者名 三谷銀屋
タイトル 夢の音がきこえる
著者 三谷銀屋
価格 400円
ジャンル そのほか
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紹介文
ディズニー映画作品に出てくる脇役&悪役を主人公にした二次創作小説短篇集です。
プリンセスとか王子様はほとんど出てこなくて、おっさん濃度高めです。
捏造設定多数。全体的に暗い話が多いので、原作のイメージを壊したくない人はご注意ください。

〜この本に出てくる脇役&悪役キャラクター〜
「アリス・イン・ワンダーランド 時間の旅」よりヘイミッシュ・アスコット
「ポカホンタス」よりココアム
「ムーラン」よりチ・フー、シャン・ユー(とフン族達)、ファ・ズー(ムーランの父)

(※注:原作の設定を基にして新しいストーリーを独自に創作した二次創作小説は、基本的に著作権法2条1項11号に規定される「二次的著作物」には該当せず、原著作権者の著作権を侵害するものではありません。ご理解いただければ幸いです)

「剣の記憶」

 どこまでも広い空。どこまでも続く赤茶色の大地。
 十五年前のあの日、抜けるような蒼天の下で、ファ・ズーの目の前には広漠とした真っ直ぐな地平線が広がっていた。
 西の果ての国境付近から見える風景。
 それは、建物がひしめく賑やかな都とはもちろん、ファ・ズーの家がある郊外ののどかな田園風景ともまるで違っていた。
 正直に、ただ一言、美しい、と思う。
 しかし、この雄大な自然の美しさに酔いしれてばかりではいられない。数刻の後には、雲ひとつないこの青空の下、大地は多くの人間の赤い血で染め上げられることになるだろう、とその時のファ・ズーは思った。
 フン族の騎馬軍との戦いの時がすぐそこまで迫っていた。
 草原に住み、遊牧を営む民であるフン族。彼らは、これまでも度々、国境を越えて帝国の村を襲撃し、嵐のような略奪行為を繰り返してきた。朝廷は国境の守りにつく兵士の人数を増やして対応しようとしたものの、神出鬼没で逃げ足も速いフン族の暴虐を止めることは難しく、国境警備の強化も焼け石に水の状態が続いている。
 しかも、その乱暴が最近とみに激しさを増してきた。
 略奪だけでなく、国境の警備隊を挑発するような動きもある。フン族は、我が国の物資や食糧だけでなく国土そのものを侵略しようと考えているのではないか、という不穏な噂が都に流れるようになった。
 今回、ファ・ズーが隊長の一人として派遣された出兵は、今までのように略奪行為を働きにきたフン族を追い払うだけのものとは異なり、帝国軍が自らフン族と正面からぶつかり合いに行こうというものだった。帝国の強さをとくと見せつけて、フン族の炎の如き傍若無人に水を浴びせようという目的だ。しかし、フン族の騎馬隊は強い。ただ真正面からぶつかるだけで勝てるような相手ではないことは明らかである。だが、国のためにも決して負けられない戦だ。ファ・ズーは緊張と闘志で身が引き締まるような思いを抱いていた。