出店者名 尼崎セレクト
タイトル 花街ダイニング(R18Ver.)
著者 まるた曜子
価格 850円
ジャンル ファンタジー
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紹介文
おっさん×少女就職活動ファンタジー

《石の子供》として隣国に売られる寸前、通りすがりの退役軍人《ササヅキ》に救出された10人の少女たち。帰れない彼らの次なる試練は『就職活動』!
戸惑う共同生活、初めての「勉強」、いままでの家事とは雲泥の丁寧な下働き、せわしない都会の暮らし。
そんななか、最年少の《セリ》は、ササヅキが食堂を開くと知る。
「ササヅキ、あたしササヅキの手伝いできる?」
「店のか」
「うん。娼館の手伝いだけだと返済ぜんぜん足りないし、まだ外に働きに行けるほど勉強できてないんだもん」
目指すは手に職、まずは完済、8歳から15歳の少女達が織りなす群像劇。

ラヴは少なめ、借金はたっぷり。
そんな剣と魔法はしょぼしょぼの、貧乏くさいなんてことないファンタジー!
彼らの『ifその後』と設定集がセットのR18小冊子付きバージョン有。

 眩む光。それから? 声。順番は、たぶん。蓋が開いたんだというのはだいぶたってから。マーナが泣きながら抱きついてきたので、外にいるって気がついた。
 その光がササヅキのランタンだとわかったのは次の村で状況を明を求められてから。自分の手も見えない箱の中で、隣のすすり泣きやノックの音だけが意識を戻した。そこまで衰弱してなかったので3〜4日のことだろう。だけどそのあいだ膝を抱えて箱の中で、しゃべることも排泄を我慢することもできなくて早くに意識は飛んでたと思う。――自分の境遇についてあんまり考えたいような待遇じゃなかったからね。

 あたしが生まれる前から戦争が続くこの国では、『うまくやった人』と『搾取されるだけの人』の貧富差が地域差で定着していて、あたしの村はもちろん後者。口減らしに女工として雇われていったのは村でもあたしの他に5人はいた。マーナ以外の子はたぶん予定通り紡績工場に行ったと思う。
 ともかく、あたしは朦朧とした現実逃避から意識を取り戻して、軍人らしい人の背中を追った。どうやら助けてくれたらしい。けど、助かったのかな? 次になにが起こるのかわからず、残りの箱から他の子たちが取り出されるのを見つめていた。
「お前らどうした? なにが起きたかわかるか?」
 残念ながら、その質問に答えられた子はいなかった。
「……あん? なんじゃこりゃ、糸か? 縫われてんのか。うええ、えげつね。悪いが糸切りバサミは持ってねえんだ。次の村までそのままだがナイフじゃ引きつれるからな、我慢しろ」
 あたしたちの唇には1ヶ所、上下を縫い合わせたところがあって言葉は出せなかった。
「全部で10人か……。まあ、まっとうな所行じゃねえのは確かだな。お前らが積まれてた荷馬車は車軸がイカレて走らない。この面子で野営は無理なので夜通し歩くぞ。幸い街道は広い。この時間にゃ他の馬車も通らないだろうから真ん中いける。少しはマシだろ。まあ、ゆっくりな」
 たまたま近くにいたあたしの頭が撫でられる。
 獣避けの煙を燻して、あたしたちに順番に浴びせさせる。ミントがすごくきつくなったようなもので臭かったけど、たぶんあたしたちは相当臭かったはずたから軍人さん――ササヅキはもっと臭かっただろうなって同情する。10人もの人数が箱の中で汚物まみれだったのだ。
 まだ夜深い街道沿いの森縁で、でもランタンは導くように揺れた。


少女たちには未来がある
セリちゃんかわゆいかしこい!! 
賢い子はね、美味しいです(いいのかその表現で)。

「花街?」って思ったけど娼館とそれに隣接する食堂が舞台で、なるほど花街。
攫われて助けられた(?)10人の少女が居場所を見つける話です。

レジーディアンの覚悟は身に染みたし、その道に進む躊躇いがありありと感じられた。
一つを過去の箱に入れることが前に進むための準備になることってホント多いんですよね。
彼女にもエッダのような結末があってほしいと願う。

で、やっぱりセリが可愛いんですよ。
賢くてこまっしゃくれてて(あれ? 褒めてない?)、
暗算が得意なのは、普段書類の枚数数える業務だけで頭こんがらがってる私からしたらとてつもなく羨ましいし、なんのかんのササヅキからも信頼されてるよな、と。

10人の少女たちは、もちろん必要に迫られてなのだけど、
ちゃんと「生きていく道」を見つけて「手に職」をつけて、すごくたくましい。
元気が出る本です。オススメ。

おまけのR付き冊子もきゃわゆくてよいです。
しあわせなえっちはいいぞ。
いいぞ。
推薦者氷砂糖

女の子同士の繋がりが未来を開く
まるた曜子さんの「花街ダイニング」は、女の子たちが身を立てていくことの「選択」がテーマ。過酷な状況から始まるけど、みんな可愛くてなんとかなるので、元気出したいときにおすすめ!
現実の児童虐待や人身売買、戦争や貧困とも重ねられる背景が色濃いが、西洋ファンタジー調の世界観で包んで、時折コメディタッチのドタバタ劇も挟んで、子どもたちの力強さに焦点が当てられる。まるさたんの、とっても深刻な話が元気良く進む作風は個性だなあと思います!
個人的にはレジーディアンやマーナが好きです。百合ってよりは、シスターフッドだ!ササヅキは、いい投資したね!お幸せに!!!
推薦者宇野寧湖

一人、また一人。自分の人生を掴み取って行く
産業革命以降のヨーロッパを思わせる世界。
紡績女工になるはずの十人の少女が、悪い人買いに攫われたところを退役軍人ササヅキに助けられ、一人、また一人と自分ひとりで生きる道を掴み取って行く痛快エンターテイメントです!

十人みんな、得意なこと好きなことが違うし、キャラが立っていて楽しいです。計算が得意な子、文章を書くのが上手な子、パンを作るのが大好きな子……。
私は何にもできないエッダと、心優しい豚飼いの大男ニタの話が大好きでした。
そして美しく誇り高いレジーディアンの生き様は、特別に印象的でした。

最年少だけど一番賢いセリの活躍が小気味よいです。
こましゃくれて、年齢に似合わず頼もしい彼女。それだけに、ササヅキにすがりついて自分をどこにもやらないでほしいと泣き叫ぶシーンは、この幼いセリがこれまでどんな人生を歩んできたのかということに思いを馳せずにはいられません。

R別冊はもう、二人がここまで辿ってきた道のりを思って「よかったね!よかったね!」という気持ちで胸がいっぱいに……。空腹が最大の調味料であるように、そこに至るまでの長い過程こそが最大のエロスなんだということを実感します。

生活感溢れるファンタジー群像劇。軽妙な語り口で苦労なくスイスイ読みすすめてしまえるのですが、登場人物それぞれの人生が複雑に交錯する、かなり長い時間の物語なので、これを書くのはとても難易度が高いのではないか……などと思ったりします。
圧巻の筆力。安心してお楽しみください。
推薦者並木陽

食べる、学ぶ、稼ぐ、生きる。
おんなのこ可愛い。可愛いだけじゃなくて、みんなちゃんと自分を見つめて、好きなことや得意なことを見つけて伸ばしていくところが素敵。そうせざるを得なかった、誘拐事件は不幸なことかもしれないけど、それを踏み台にして高いところに飛んで、新たな視点を見つけられるのは幸せなこと。子どもたちみんな幸せになってほしい。
ササヅキが「お金(お前たちを養育・教育するには経済的負担がある)」と「教育(借金を返済するためには稼がねばならない、稼ぐには教育が必要だ)」について少女たちに説いたのはすごくフェアで、この作品のキモでもあるわけですが、それを突き詰めると、「お前たちにはその価値がある」となるのが素晴らしい。(口減らしのために売られるはずだった子たちにそれを言い聞かせるんですよ!)

セリやレジーディアンはじめ自分の道を歩く子たちはもちろん最大限にお祝いするけど、ホーリのようにうまく歩けない子もいて、彼女らを努力友情勝利の方程式に組み込むのではなくて、セーフティネットで受け止めているのがまるた作品が社会派な所以だと思う。
本好きとしては、ハルタと辞書のエピソードが好きなんですけど、もしかするとヨークンドが好きということかもしれない……。 

まるた作品の女の子は一言で言うと「自立」、自分から動き、愛することができる子が多い。恋愛ジャンルの作品でも彼女らが自分で考え、手に職をつけて自分の人生を歩んでいた「から、そのご褒美として愛が与えられたという構図ではない」ことが読んでいてとても爽やかで気持ちいいし、そうだよこれだよ、って思う。
この「花街ダイニング」も、ささやかなエピソードが登場人物に深みを与える上質エンタメかつ歳の差! 長さがちっとも気にならない成長譚! おすすめです。

(R18のおまけ冊子はご褒美的ムフフなお楽しみです。えっちいのがお嫌いでなければぜひともR18版をどうぞ)
推薦者凪野基



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