出店者名 白昼社
タイトル soyogui, その関連
著者 泉由良
価格 500円
ジャンル 純文学
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紹介文
2011年に書かれた掌編を中心に編まれた、詩と短篇の小説集

あの節電が喧伝された夏、色鉛筆研究家の恋人、
落下する自転車を幻視する美大生、街角の蒐集家

人と人のすれ違うほんの一瞬に感電のように走った仄白い光
淡く儚いのに何処か怖い せかいは怖い

「そよぎ」
「くらげ骨なし」
「鉢と温室」

『適温適度の遊書部2011』   「なんて可愛らしいのでしょう」
  「素敵な詩人さん」
  「カラフルネイム」
  「コンパスでダーツを」
  「一枚だけ下さい」

「そよがず」

about solar
  「空について」
  「何処までも世界」

秋の音符
  「ミッシェル」
  「カセットテープ」
  「あきうた」
  「ひととせ廻り」
  「夜明け」

「ルルカのの点描画」

   

 ねえ、ニイチ。元気ですか?
 ちょっと、なんか、逢いたいなあ。

 警察のひとがちょっとだけあなたのことを探しているみたいだけれど、きっと捕まったり怖いことになったりはしないだろうなと思います。司法解剖のひとたちは実際のところ死因はよく分からなかったみたい。ニイチ葬儀に来なくて良かった。ああいうの、嫌いでしょ。あたしも嫌い。まあ、お葬式のときにはあたしはそこには居なかったわけだけれどね。ニイチが居たら、やだったと思う。なんかお葬式ってさ、生きているひとの為のことだよね。

  *

 ねえ、ニイチ。
 愛してるっていう言葉を、あたし勿論ちゃんと知っていたけれどでもやっぱり知らなくって、だからいっぺんもあなたに云いませんでした。すごいすごい好きだったけれど、愛しているとは云わなかった。愛について本当にはちゃんと分からなかったし、そういうのもあるから、だから云うの、怖かった。
 でももしかしたら、ニイチがあたしにしてくれたことってさ、全部、ああいうことは愛情だったのかなあって、今になって思ったりします。
 普通はしないでしょあんなの。あたしのことを特別にしてくれていたんだなあって思うと、それは、愛だったのかも知れないと思います。
 でも、あの、ごめん。
 あたしは今でも「愛している」って云うのは、怖い。死んだって怖いものは治らないらしいですね。馬鹿みたいだよね。分かっているのに。愛されていたんだなあって心から思います。そのことを考えると、涙が出そう。
 でもやっぱり、あたしからは云えなくて、怖くて。

 うん、でもね。
 今でも好きだよ。なのになんでああいう風なのは云えないんだろう。泣きそうだよ。
 もう、なかなか逢えないね。
 でもね、好きです。
 それから、
 ありがとう


歪なやさしさにふれて
17の小説と詩が掲載されているこの本は、とてもリアルで、とても歪でした。
リアルなのは、きっと著者が実際に体験されたことを書かれているせいではないでしょうか。実際に起きたことを書いている匂いがします。
歪なのは、世界そのものであったり、人の一部であったり、心の在り方だったり。
ソヨギという服だったり、白い袋がくらげだったり、花を食べたり、冷凍みかんを書くことだったり、色の捉え方だったり、自転車が落下する絵だったり、他人の家の植木鉢に興味を持ったり……
いえ、それを歪といっていいのか、本当のところはわかりません。
人によってはそれは歪でもなんでもないかもしれません。
ただ、例えば常識とか、社会とか、そういう一般的といわれるものと比べると、歪な気がするのです。
この歪さの正体を辿っていったとき、この本は、物語というよりも、思想のように思えました。
一番強く感じたことは、世界が怖いところであるということ、けれども、やさしくあってほしいと祈っているということ。
2011年、東日本大震災の年に書かれた作品ということも関係しているのかもしれません。

この本に、著者の気持ちに、ふれてほしいと思う一冊です。
推薦者なな



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