出店者名 そこそこ
タイトル Nearby Monitor
著者 本田そこ
価格 400円
ジャンル 大衆小説
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紹介文
「後輩の女の子を好きになっちゃった」

「大学生活開始早々に轢き逃げされた」

「行き付けのバーで良い女を見つけた」



そんな人達の側には誰かがいる。

誰かは誰かをいつも見ている。



その日常を、お話しします。

* 恋愛の話

春の終わり、初夏の陽気が増してきたころのことだ。

私の通う高校の屋上にはベンチが幾つか置かれていて、晴れた日の昼休みには爽やかな空気と共に食事をしたい生徒たちがそこに群がる。
かくいう私もその中の一人で、屋上の角に近い位置にある黄色いベンチに座りながら、友人の薫と一緒に、購買で買ってきたハムサンドをもしゃもしゃと食べていた。
屋上には木々が何本か植えられていて、幾つかのベンチはその木陰にある。私たちが座っているのもそんな場所の一つだ。
「ねぇ薫、今日の放課後、時間空いてる?」
話しかけたら、薫はサンドイッチを咀嚼しているところだった。それが終わるまで少し待つ。
「ん?空いてるけど」
黒髪の三つ編みにレンズの分厚い黒縁の眼鏡、少し地味な恰好だけど、よく見ると美人なのが薫だ。唇の近くにマヨネーズが付いている。
「ちょっと相談に乗ってほしいことがあってさ」
「別にいいけど、今じゃ駄目なの?」
「んー、ここでは少し話しづらいんだよね……」
悩み事というのは皆がいる場所では開陳しにくい。屋上はそれほどぎゅうぎゅう詰めになってはいないけど、周りの生徒の誰かに聞かれてしまうかもしれないっていうのがちょっと嫌だと思ったのだ。
「そういうことならいいけどさ」
そう言ってから、薫は残りのサンドイッチを頬張る。頬張りながら、口の周りに付いたマヨネーズに気付いたみたいで、さっと舌で舐め取っていた。もぐもぐと口を動かす様を横目に見ながら、私も残りのハムサンドを片付ける。
それから、いつも通り他愛のない話をしてのんびりと昼休みを過ごし、そろそろ終わる頃に屋上を出て教室に戻る。
「放課後、話するならどっか行く?ここじゃしづらいんでしょ?」
私の教室の前で、別れ際、薫が訊いてきた。今は薫と別のクラスなのだ。
「そうだね、喫茶店かどこかかな」
無関係な人々の喧騒の間なら、多分、話せる気がする。
「ま、放課後、合流してから適当に決めようか」
「うん」


This is ごうがふかいな
 何気ない日常が点々と続いていく中、最後の最後でその全体像が明らかになるという仕組みの連作短編集。その仕掛けについてはここでは述べられないのだが、中心となるキャラクターの造形、その表情、時系列と共に進展していく周囲の人間関係の描写が細かくリアルであるのに対し、「彼女」の作り込み方に対する異様なまでの熱量が、かえって「彼女」を得体のしれない何かへと昇華させてしまっている。淡々とした文体の上に築かれる、一本の巨大な槍のように強固で揺るがない「ごうがふかいな」に、作者の本田そこ氏自身の熱意とエッジと並々ならぬ情念を感じる素晴らしい一冊。
推薦者ひざのうらはやお



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