出店者名 ペーパーカンパニー
タイトル 華食症
著者 正岡紗季
価格 100円
ジャンル 掌編
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紹介文
 私、正岡紗季はエッセイbonologueシリーズで今のところフランス料理のレストランを例に取りおいしいつぶやきを書いています。その言い訳本として掌小説を作りました。二千字ほどのショート・ショートショートです。
 伊東さんがトチ狂って入院してしまった精神科閉鎖病棟には摂食障害、過食症や拒食症で入院し、栄養剤の点滴を転がしながら歩く患者さんも多い(なんて本編には書いていませんが)
伊東さんはおいしいものを食べずにはおられないだけで身体の症状には表れない。依存症に名前を付けるとしたら華食症、と、正岡の自虐を発酵させた短いお話です。

「誘える人いないの。休日や夜はちゃんと妻業してるのよ」
 ひとりごはんに慣れて歯止めが効かなくなったという。都合や予算が合う人がおらず、合わせる必要もなくなった、と。
 仕事に出るのはオット氏が嫌がるそうだ。
「つまらないプライドだけど周りは羨むよね。孤独だよ」
 泉が暮らしているパートナーはアルバイトだということを隠していた。入籍を「まだ早い」とずっと言ってる。嫌われないために尊重しながらも傷付いていた。伊東さんを羨むなら、家族になりたいと思われたことの方だ。
「オットの稼ぎでいいもの食べて病院で上げ膳据膳。入院費まで出してもらって、いい旦那さんね、あなたしあわせね。ってハハは言うわね」
 ハハが実母だと泉が気づくのは随分たってからだった。