出店者名 ペーパーカンパニー
タイトル bonologue vol.2
著者 正岡紗季
価格 800円
ジャンル エッセイ
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紹介文
bon(おいしい)+ monologue(つぶやき)で、bonologue(ボノローグ)です。煩悩の記録(ログ)でもあります。
料理人が作りサービスマンが提供し私が食べる、真剣勝負の食事の場。東京丸の内のフランス料理店、オーグードゥジュール・ヌーヴェルエールを劇場とした美食体験をつづっています。
※現在は店名を変えて移転しています
コース料理の順に個々の皿についてカラーの写真と文章で紹介し、また、食材を・いのちを生かす料理、サービスについて等々主にヌーヴェルエールでの体験から得た思いを綴りました。

  一、アミューズ より

 あるいは、サブレ・サレ
 ディナーのアミューズで好きなのが、サブレ・サレ。
 サブレ。仏語で砂という意味。お菓子のサブレもクッキーと比べて食感がザクザクしていますがヌーヴェルエールのサブレに比較は不要です。
 口に含んだ途端にほどけてしまう。潮に濡れてかろうじて形を保っていた砂が記憶をなくしてしまう瞬間に立ち会うようです。
 こんなに甘美に砂を噛む日が来ようとは夢にも思いませんでした。
 満足感(とカロリー)で食べた瞬間にお腹いっぱいになり、実は後が苦しいのですが、つまるところ食べる幸せを固めた立方体なのでしょう。

  七、カフェ

 紙の一覧表とともにサンプルが試験官で出てきます。セラーからワインを選ぶような粋なサービス。口頭説明が難しいなら現物を見てもらえばいいじゃないか。ディレクターの声が聞こえるようです。というのもこのプレゼンテーション、氏が嬉々として「こういう楽しさを創り出すのが楽しい」とかいうようなことを写真付でSNSにアップなさっていたからです。
 コーヒーなり紅茶なり、ご説明いただいたところで、選べるのは概ねわかった上でこそ。「さっきのアレ」を正しく通じ合えるかどうかは怪しいところです。ハーブティともなると趣の方向がバラバラ、だからこそ選びたい。カフェインNGでも積極的選択ができる。こどもが生まれたらしばらくは行けなくなる妊婦と行く際に、ハーブティ(とミネラルウォーター)の品揃えが豊富なので楽しみの目減りはありません。
 外観の敷居に反して制限が少ないことも同種の魅力と感じています。郊外へ引っ越してもアクセスがいい。遠方からの家族と行ける。東京の玄関口のひとつ、東京駅直結なのは強いです。丸ノ内線東京駅からなら改札を抜けて正面すぐですし、各線大手町駅からも傘いらず。休まず営業していることも敷居を下げます。ビル点検で全館休館等を除いてほぼ無休、中の人が休みを取れて質を維持できるなら、これほどありがたいことはありません。
 透明な薄いガラス管を丁寧に扱い、コルクの蓋を開け閉めする。自然と会話も弾みます。昼間の抜けるような空や夜の街灯りの光降る、宝石箱のような店内に、よく映える光景です。


毎日の食事が彩づいて見えるようになる、美食の本
「bonologue(ボノローグ)」というタイトルの本である。
bon(おいしい)+ monologue(つぶやき)で、ボノローグ。
煩悩の記録(ログ)とのダブルミーニングでもあるらしいが、
要は美食の体験をつづったエッセイである。

 飯テロ――。

 数ページめくったところ、私の脳裏にこの言葉がうかんだ。
飯テロとは、ウェブ上に美味しそうな食べ物の写真をアップし、
それを食べられない閲覧者たちの食欲を無慈悲にそそる行為である。
この「ボノローグ」という本は、文章による飯テロなのではないか。
午後11時前のおなかをすかせ始めた胃袋がとっさにアラームを鳴らした。

 その不安は杞憂に終わった。
確かにつづられているものは大変美味しそうな美食体験記で、
間に挟まれている華美な料理の写真も、
食欲をそそるには十分なものであるはずだった。
しかし、これは飯テロではない。
何故なら私の胃袋は、この文章を読むことによって満たされたからだ。
エッセイの形を取っている文章である。
正岡さんの軽快な語り口が心地よく、ページをめくる手を急かしてくれる。
アミューズ、前菜、お魚料理、肉料理、デザート、小菓子と、
供される料理によって正岡さんの描写も変わる。
ときに素朴に、ときにかしこまって、ときにアバンギャルドに。
それはきっと料理を食べたときの正岡さんの感情そのもので、
読者は文章を読むことにより、それを追体験する。
気がつけばその味すら感じられる――は言い過ぎだろうか?

 必然的に
「いのちには必ず背景があります。背景はモノにものがたりstoryを与えます」
という作中の言葉が説得力を持つ。
食事する行為は物語であり、文章を読むことも物語であり、
そのふたつが「ボノローグ」で重なる。
この本は、「読む食事」だ。

 読み終わると、美味しいものを食べたいと思う。
食べることを大切にしようと思う。
そういうふうに読後変われることは、エッセイの醍醐味のうちのひとつだ。
毎日の食事がいつもより彩りづいて見えるようになる、美食の本だ。
推薦者あまぶん公式推薦文



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