出店者名 おとといあさって
タイトル 読む電柱2『蕩(とろ)ける電柱』
著者 らし
価格 200円
ジャンル 掌編
ツイートする
紹介文
紙でできた電柱を解体して、中に書かれた物語を読む“本”です。
主人公はもちろん電柱。

Vol.2の本作は、温泉街に立つ電柱のお話。
立ち仕事に疲れた電柱は、くたびれた心身を癒やすため、真夜中、露天風呂に忍び込みます。ところが、あまりの気持ちよさにだんだん体が柔らかくなってきて……!?
電柱に生命の危機が迫る!

読後は元に戻して飾っておくことができます。

 そうやって、どれだけの時間湯船につかっていただろうか。ぼんやりとした意識の片隅で、電柱は、東の空が白みはじめているのに気がついた。
(いけない。そろそろ帰らないと!)
 慌てて立ちあがろうとしたけれど、どうしたことか、足に力が入らなかった。コンクリートの体は湯の中でぐにゃりととぐろを巻いていた。
 あれ。あれれれれれれれ。
 電柱の体は、煮込みすぎたうどんのように柔らかくなっていた。疲労はあまりに長く、そしてあまりに奥深く、電柱の体に食いこんでしまっていたのだ。いま、ストレスから開放された電柱は、くさびを失ったやぐらのように、自身の形状を保つことができなくなっていた。なんということだろう! 電柱の体は、露天風呂のまんなかで、みるみるうちにとろけはじめた。
 遠くの空から月が何かを叫んでいたが、感覚を失った電柱には、もうだれの声も届かなかった。


贈れる電柱
 私の部屋には電柱が二本立っている。踊る電柱と、この蕩ける電柱だ。らしさんの作品はどれもおしゃれで、可愛くて、美しい。しかし私は声を大にして言いたい。らしさんの作るものの素晴らしさは、見た目だけじゃないんだ。そこに書かれた文章を数行読むだけで、物語を深く読み込み、大切にして生きてきたことがよく分かる。あまりにも物語を愛するために、物語の容れ物まで物語の一部になってしまう。そういう必然性こそが、らしさんの最大の魅力で、強みだと思う。
 蕩ける電柱には声を出して笑ったところがある。この文章を書くために読み直してもう一度笑った。読み終えてくるくると紙を巻き、元通り電柱はコンポの上に立っている。何事もなかったかのように。
 プレゼントにしても喜ばれるはず。壊さないよう気を付けてお持ち帰りください。
推薦者柳屋文芸堂

遊べる本
この本は、電柱は、遊べるのです。
私は、フィギュアと一緒に写真をとって遊びました。
ミニチュアの街中に、中身のある電柱が!!

見た目の電柱可愛いんですけど、中身の電柱も可愛かったです。
そして私は見逃さない。ハシビロコウの文字を!
ハシビロコウのたちっぱなしさは、確かに電柱といい勝負!
推薦者小高まあな