文藝誌オートカクテル耽美―星に(なって)願いを
伊藤なむあひ
 パピ子はかわいそうな女の子だ。

 プリンは一日一個までだしゲームは一日一時間まで。そのうえ昨夜、ダンスホールにてバラバラ死体となってしまったのだ。

 かわいそうなパピ子はダンスホールの片隅、誰もが音楽に気を取られている間に何者かによってバラバラにされた。彼女のそのまだ余計な肉のついていないほっそりとした右手、右足、左手、左足、そしてつるりと卵形の小さな頭は切断され埃だらけのフロアに無造作に転がり、単なる内臓の入れ物と化してしまった胴体にいたってはその日たまたま近くの動物園から逃げ出したワオキツネザルに親と間違えられたのか素早く持ち去られてしまったのだ。

 かわいそうなパピ子。これはパピ子が未成年にも関わらずダンスホールに行ったこと、そして初めてのダンスホールに浮かれていつもよりもバラバラ死体にされやすい格好をしていたことを差し引いてもまだかわいそうだ。

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