十一月題詠「葉」

これはもと何枚の葉かティーバッグの中はよく見えない緑茶

これはよく見える茶漉しでこしているこれから立てる安いお抹茶

この中にも葉はあるのかと振ってみるインスタントミルクティーの粉末

残された葉書の画像データをみ君に手紙を送りたくなる

樹であった葉は確かに樹であった落ちたときにはもうただの葉で

       ■ 朝凪空也

十月題詠「かそう」


 仮想

金を出し時間を使いバーチャルの世界に逃げて、逃げて、逃げて

 仮装

化粧してそれなりに見える服を着て仮装し武装し息を殺すの

 火葬

肉焼ける匂いもなにもわからずにただ煙だけがのびる火葬場

 下層

あす食べるお米がなくて無保険で電気もガスも止められました

       ■ 朝凪空也

九月題詠「月」

毎月の取捨選択の結末に残ったものが私の人生

あの人は月のようだね裏側は誰にも見せず一人凍える

リゾ婚でムーン・ブライド流行ってる未来までちょっと見に行ってくる

歯科治療終わり毎月来る葉書「定期検診おいでください」

しがみつくふりしてぐっと三日月の形になれと残す爪あと

       ■ 朝凪空也

八月自由詠

なにものにもなれないことに気づいても心臓はまだ動き続ける

一億回/一生(ヒト) 今何回目? 私の鼓動

AIBOより長生きしちゃう僕たちを知恵ある者(ホモ・サピエンス)とヒトは名付けた

ゴミの日に合わせて今日もわたくしは段ボール箱縊り殺しぬ

満足した豚になりたいプラトンじゃなくてプランクトンになりたい

       ■ 朝凪空也

「砂」題詠

この岩が砂になるまでわたくしはきっとあなたを待っていましょう

星砂はいのちの残滓こんなにもたくさんみんなどこへ行ったの

砂嵐眺めるヒトデ、海綿はワーカホリック。アニメの話。

砂を噛むようなと例えた人はさて砂を噛んだりしたのかどうか

何処からか入り込んでた砂つぶがザリリと廊下で鳴ったため息

       ■ 朝凪空也