二〇一七年八月自由詠

朝凪空也

なにものにもなれないことに気づいても心臓はまだ動き続ける

一億回/一生(ヒト) 今何回目? 私の鼓動

AIBOより長生きしちゃう僕たちを知恵ある者(ホモ・サピエンス)とヒトは名付けた

ゴミの日に合わせて今日もわたくしは段ボール箱縊り殺しぬ

満足した豚になりたいプラトンじゃなくてプランクトンになりたい

 

壬生キヨム「鍍金的深夜のファミレス」

でたらめに星が並んだ夜のこと 目を光らせて出かける準備

お星さまの評論家気取り彼氏気取りにぎやかな深夜のファミレス

星同士のケンカだパンチが当たるたび夜空に上がるぐちゃぐちゃな星

来年の花火は一緒に見ようね、とコメット・ハレーと約束したこと

図書館で迷うというのは本たちに愛されている証拠なのだよ

おおい、ぼくだ。いい子にしてれば小さな死をあげるよ窓を開けておいてね

視えなくても残った絆があるかぎりトゥインクルぼくはだまされないぞ

戦いは昨日の明日 おとうとは短歌バイキングで腹いっぱい

絶対に泣かないことを条件に星の紳士に会わせてあげる

彗星にみんな何かを盗まれて、恥ずかしいから話はおしまい。

 

泉由良「夜中の理性」

闇の中コンロの下に蛍光のデジタル数字の03:45

真夜ん中台所に直立してもフォークで髪は梳かない理性

開くなり光を溢す冷蔵庫まるで月夜の救命ボート

一度だけガス火を点けてみようかと でもまぶしかつたらきつとかなしい

真夜中にメッキのスプンやフォークでなど丹念に磨き魔女みたいかも

電気スタンド話し相手のアルコホル 珈琲に至る失態の夜

夜中は甘美だれも居ないから甘美他人に映写機で見せてあげたい

横になる縦になる斜めになるいづれ枕元には時計は無いです

角砂糖、ミルヒ、メモ帖、万年筆、夜中は私の所有するもの

無頼派の床に寝転ぶ女なら夜明けといふ名の朝は知らない