八月雑詠

川蟹や煉獄の火を掲げをり

夏深し鯨ヶ丘に塩の道

漬物の青は秋風へと移る

地下街のがらくた尖る天の川

八月の雨に雨つぐ黒電話

終戦の日や指の腹はぼろぼろ

忘却にへこむ額よ秋涼し

歯並びは鬼ゆづりなり蓼の花

赤のまま取集時刻は消えてゐる

不知火やβ世界線のたわし

左手は布巾にくるむ芙蓉かな

暦師の版木色褪す水澄みて

空赤き北極の絵よ秋の暮

忘れ井戸悲しき星月夜を吐く

密告の魚を洗ふ稲光

  ■ 牟礼鯨

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