野生のばら


さようなら
さようなら
僕はいきます
今まで一度も
野生のばらが咲いているのを
見たことがないことに気付いて
そのままで今日が暮れるのはなんだか
とても不完全なことだと思うので
旅に出ます
野生のばらを捜しに

花瓶にあふれたその記憶はあるのだけれど
セロファンにくるまれ何本も束になって
カスミ草を添えられた
それも良かったのだけれど
誰が植えたのでもない
誰が育てたのでもない
朝露を飲み土に根ざしたばらを
捜しにゆきます

そうすれば今日の最後のひとかけが
埋まるような気がするのです
棘に埋もれて眠ります
おやすみなさい



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