つめたい水


つめたい水を捜しにいこう
あかるい方へ歩いていこう
つめたい水は甘いだろう
そして喉を潤してくれるだろう
喋り過ぎて叫び過ぎて呼吸をし過ぎて
この喉はひりひりするから
つめたい水を捜しにいこう
ひとりで何処までも歩いていこう

旅に出ようと決めたのはもうずっと前で
でも例えばこの棚いっぱいの文庫本を置いていけずに
私はまだこの部屋に燻っています
今日は帰ってくるよ
旅とは帰ってくるものなんだよ
なんだ、じゃあいいじゃない
旅に出ようと決めたときには
帰らないつもりでいたものでした

つめたい水は井戸水だろうか
それとも静かな渓流だろうか
或いは4月の湖だろうか
喋り過ぎて叫び過ぎて泣き過ぎて
この喉はひりひりするから
水を飲みにいこう
そう決めました

夏草の線路を辿っていこう
つめたい水を捜しにいこう



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